山のもの ;海のものとも山のものとも
2006/05/08 up    
尾瀬・至仏山
鳩待峠〜至仏山〜ワル沢上部〜至仏山〜ムジナ沢〜山ノ鼻〜鳩待峠
2006/05/04(thu.)
 単独.・(鳩待峠/車中泊+)1day・山スキー 行程6時間10分 [行動時間 5時間]

雪の至仏山は跳ね出たMOBYDICK 好天と早出のおかげで山頂から2本滑る
時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです あくまでも参考としてください

 自宅→【沼田/関越HW】→鳩待峠 6時間/約250km〈¥4,850〉
鳩待峠まで車で入れる期間は短く、至仏山(シブツサン)で山スキーを楽しめる期間となるとさらに短い
峠の駐車場は満車が当たり前と聴いたので早目に着くように自宅を出る
前調べが悪く、戸倉〜鳩待峠間は雪崩の危険があるため夜間通行止め(17:30〜翌7:30)を知らなかった
が、早出が幸いして17:00に戸倉のゲートを通過 『よかった!』 17:20頃に駐車場着 峠のかなり手前から路駐があるが、この時間になれば日帰りの方々分の空きができていた
駐車料は¥2,500/1日(追加1日ごとに¥1,000) この時期、この山道を除雪してもらえたなら安いもんだと思う
道の両脇はまだ3m以上の雪の壁だ
 -帰りに聞いた話では、朝は路面凍結あり ノーマルタイヤで登れない車で大渋滞だったそうだ-
コンビニ弁当の夕食を済ませたら、星を観ようと空を観るが、三日月が明るすぎる夜だ 早々に車内で寝袋に入る
今日はGWの渋滞運転だったので熟睡する
04:30起床 この時間の外気は-3℃ 普段、初夏の陽気に慣れているので結構寒く感じる 車全体も霜に覆われた
天気は快晴 西からの微風 『楽しい一日になりそうだ』
今回はリフトは無い 車内でシールを貼って出立
駐車場から休憩小屋までの坂道も雪解け水が凍っていてツルツルだ 危うく転びそうになる
鳩待峠駐車場 1585m 気象;快晴 西の風 気温;-1℃ 雪;硬ザラメ
05:30入山
DoCoMo
同じく鳩待峠で車泊した方も数名出立するが、皆さん板を持っておらず山ノ鼻に降りて行かれた 独り至仏山への森に入る 赤布のマーキングがしっかりある
背中に朝日を浴びながら、小さいアンジュレーションが繰り返される緩い登り道を行く 朝なので雪は硬い 滑った跡よりツボ足跡が沢山あるが広い尾根なので、滑らかな場所を選んで進む
シール
 50分
1867mピーク 巻き 1835m 気象;快晴 気温;0℃ 雪;硬ザラメ
06:20
最初から右手の木々の合間に至仏山が見えている
全体的にはなだらかな南北の主稜線とそこから少し飛出た小至仏
白く巨大なモノが裾の木々の森から跳ね上がったように見える
至仏山は同じ尾瀬にそびえる燧ヶ岳と比較して【優しさのある女性的山】と称されるが、
自分には 【神、巨なる鯨を創造りたまへり】 MOBYDICKを想像させる
ならばエイハブ船長の気分で 『いや、自分にはあんな強烈な執念は無い』
『至仏山... 仏に至る... 神々しいのか不吉なのか』
独り生き残ったイシュメルの気分でいよう

この尾根にも
良い斜面がいっぱい
登山尾根沿いには2〜3張のテント・ツエルトがある
最初の小ピークは真上を越えて行く

次の1867mピーク 夏道は南を巻くそうだが雪道は北側に付けられていた
トカゲ岩はまだ雪の下? よく解からなかった
シール
 25分 
1935mピーク 巻き 1910m 気象;快晴 西の微風 気温;0℃ 雪;硬ザラメ
06:45
1935mピークも北側を巻く
木々も低くなり至仏山が一望できる

『やはりMOBYDICKだ でも、その脇腹にあたるワル沢 いい斜面だ』
今日はムジナ沢だけ滑るつもりでいたが、あの斜度&広さ そしてこの天気
気温もどんどん上がるであろう 『上部の雪質を診て滑っちゃおうカナ〜』
シール
 15分 
オヤマ沢田代 2035m 気象;快晴 西の風 気温;4℃ 雪;硬ザラメ
07:00
小さい沢を越えると木が減り、短い斜め登りで[ポン]と広い場所に放り出される オヤマ沢田代だ
雪が無ければ極楽浄土の高地湿原なのであろう 今は広大な雪原 風が抜ける稜線なので所々アイスがある
至仏山は南北に主稜線を引く 東側はまだまだ雪が豊富だが、西側にはもう雪が無く岩が剥き出しだ 東西方向には急峻であることが観てとれる MOBYDICKの背に飛び乗る
左後方には三角ピラミッドが特徴的な笠ヶ岳への稜線が延び、前方には小至仏〜至仏山への稜線が延びる こんな立派な雪の稜線歩きは初めて 好天に感謝のウキウキ気分だ
小至仏にはトラバースルートもしっかりあるが 『せっかくだ 自分は此処を登ろう』 板を担ぐ
登りルートは急だが、軽い膝下振り子で足場は確実にkeepできる

オヤマ沢田代〜笠ヶ岳

オヤマ沢田代〜小至仏
スキー→ツボ足

 25分
小至仏山 2162m 気象;快晴 北西の風 気温;7℃ 雪;ザラメ
07:25〜07:30
『おぉ すごい』 今まで見えなかった西側に上越の山々が拡がる 春霞も弱い
尾瀬ヶ原には朝日が差し込み、その雪平板に水路がのたうちまわっている 燧ヶ岳はまだ逆光だ
至仏山での展望が楽しみだ 至仏山の頂まで、そのまま板を担いで行く

小至仏山頂

小至仏からの至仏山
ツボ足
 15分
至仏山 2228m 気象;快晴 北西の風 気温;7℃ 雪;ザラメ
07:50〜08:05
DoCoMo
小至仏同様に岩が出た頂上だ 朝イチなのか、雪登山の方がポツポツ
360度の展望があるが、日光の山々を含めた東側の山は雪も少なく逆光で黒いシルエット
比べ西側の山々は残雪と言うにはまだ多すぎる雪に陽があたり白く輝いている
 -多くの自然物の場合、白は気品を高め神秘性を増し、そのものに具わる得がたい美質をかがやかせる-
その白き魔法を受けた壮大で神々しい風景が広がる
かなたに茶碗を伏せたような姿の黒姫山も見える 尾瀬ヶ原がすごい場所にある湿原だと言う事も一目瞭然だ
山ノ鼻側から登られた方々は突然このパノラマ風景が広がるため歓喜をあげている
ワル沢 ****m 気象;快晴 無風 気温;**℃ 雪;ザラメ

-すいません-
すばらしい斜面の感動も
下手な写真では伝わりません。
やれやれ、やはり登ってくる間に見えていたワル沢に取り付かれてしまった
その魅力的斜面は急すぎて、今ここからは見る事は出来ない
朝は締まったザラメ状(だろう) 『滑れる』 まだ08:00 時間は充分
問題は登り返す体力... 楽しさと問題点が交差しながらよぎる
シールを剥がし、ブーツのバックルをキツク閉める 板を履く

MOBYDICKの脇腹を覗ける地点まで板を進める 覗きこむ
『なんて斜面!』 広すぎて上部は捩れのない一枚バーンに見える
雪質も大丈夫 予想どおりだ 表面がテカッて見えるのは表面の大粒結晶だ
全体が〔ぎゅっ〕と締まっている感 雪崩の心配も無い 何本か滑った跡もある
再度地形を確認 『途中で右の尾根に上がろう』
『行ける 転ばない ぜったい行ける』 恐怖を自分の判断が正しいと信じる気持で押さえ込む
 『1・2の3!』 板先を谷に向けると[あっ]という間にコントロール限界までスピードが上がる
雪質は予想したとうりだ 安心して滑れる範囲
発したコトバにならない叫びも、残っていた恐怖心と共に後方に飛んで行く快感のフォールライン
MOBYDICKの脇腹に大回り・小回りのシュプールを描く
登り返せねばならないコトも忘れ、沢形状が顕著になる針葉樹帯の上部まで一気に滑り降りた
スキー
 10分
ワル沢1820m 1820m 気象;快晴 無風 気温;**℃ 雪;ザラメ
08:15
標高差400m 水平距離750m 中級スキー場ひとつ分を滑った 斜度は計算上28°
まんま三角関数の緩みが無い斜面だし、数値以上の興奮があった
余韻に浸りながら帰る至仏の頂を見上げる 岩帯がはるか上に見える 『...』
滑り降りるのは10分もかかっていないケド、ここを登り返すのはどのくらいかかるのか?
『登らなきゃ』 肩で大きく息をしながら板をザックに縛り付け背負う ストックのリングを外す 銛の代りだ
左の尾根沿いを真っ直ぐ登る


燧ヶ岳

小至仏
こんな巨大な雪斜面に独りぼっち まだ高く遠い稜線を歩く人が見える
『手招きしたい気持ちだ』 結局エイハブ船長になってしまった
日差しで雪がどんどん溶けてゆく 早く登ったほうがいいのはわかってはいるが、一気には登れない
立ち休みで息を整える 励ましてくれるのは、ここを滑った満足感と陽を浴びだした燧ヶ岳だ
ツボ足
 55分
至仏山 2228m 気象;快晴 北西の風 気温;9℃ 雪;ザラメ
09:10〜09:40
DoCoMo
『きつかった』 登り返しに1時間かかった 今回からハイドロレーションシステムに戻しておいて助かった
今の山頂は板を持つ方が多い
coffeeを点て、真面目そうなMr.Italian&大和撫子のアベックとおしゃべり 先ほど山ノ鼻側を登っていた方だ
お二人は昨日、平ヶ岳に登ってきたそうだ 昨日も今日同様の好天 10時間かかったと言うがうらやましい
また、福島からのソロの女性の方はウロコ板で山々を遊びまわっているそうだ 山が近い人はいいな〜
息も整った 心配した自分の体力もどうやら大丈夫 『ぼちぼち行くか 次はムジナ沢だ』
スキー
ムジナ沢 ****m 気象;快晴 気温;**℃ 雪;ザラメ
ムジナ沢側 山頂から見るとコークスクリューのようだ
『どう滑ろう?』上でルートをcheck 手前の高天ガ原からは板を外さず滑り込めそうだが、かなり高度が落ち、斜度も緩む 対して先の北尾根に回ればボトムに向かってのいい斜面が見える
沢の最下部には雪の陥没が確認できる 『北尾根からボトムに滑り込んで、適当な場所で南尾根へ』

ここから見る燧ヶ岳は尾瀬ヶ原を
挟んで正面に据えられる


『昨秋には反対から観たっけ』
主稜線を北へ だんだん雪が細くなりキックタンーンで切り返すも遂に雪が切れる
ムジナ沢源頭部で30mほどの蛇紋岩帯をツボ足で越える
蛇紋岩は滑り易いと聞いていたがno problem 黄色ぽい岩肌に白い蛇の紋様 『なるほどね』
再び板を履き、さらに北へ舵をとる ムジナ沢の北側稜線を2000mあたりまで高度を落とさぬよう横移動
『こんなトコか』 ムジナボトムに向かってやや捩れている斜面の上に立った

蛇紋岩帯はいったん板を外して切り抜ける

写真では解かりにくいが
ボトムまではワル沢くらいの快適斜度だ
朝よりチョッピリ重い雪だ その分スピードで雪を斬る コントロールできるスピードの範囲での高速大回り
さすが山スキーの名所 『気持ちいい』 ボトムまで滑ったら南尾根沿いの片斜面滑る 
スキー→ツボ足→スキー
 25分
ムジナ沢1600m 1580m 気象;快晴 無風 気温;12℃ 雪;ザラメ→シャ−ベット
10:05
1600mあたりで斜めにムジナ沢右尾根の森に入り込む
森の中の雪はもうシャーベット状で水っぽい雪だ ゆっくり滑る
森のスラロームを抜けると[ストン]と平らな尾瀬ヶ原の端に出る
朝からずーっと地面が斜めだったので、広い平坦地は変な感じがする
300mほど先に山ノ鼻の小屋群が見える
ここをスケーティング 重い雪を滑った後にコレは苦しい
呼吸腔のようなスノーホール          
水の流れがある個所は真っ先に春を迎える→
スキー

  15分
山ノ鼻 1407m 気象;快晴 無風 気温;14℃ 雪;ザラメ  異物多し
10:20〜10:35
DoCoMo
『暑い〜 疲れた〜』 ビジターセンターの横で休憩する
水場で顔を洗う 上着は薄アンダー1枚で充分だ ジャケットをザックに突っ込む
山ノ鼻は、まだ大部分が雪に埋もれているが、春の日差しの下でファミリームードいっぱい
幼子も雪まみれで楽しそうだ

春の雪中キャンプは楽しそう

ビジターセンターはまだ埋もれている

尾瀬ヶ原に流れ込む川上川
鳩待峠への帰り道は川上川に沿っている
同時に山ノ鼻を出立した[ヒゲのお兄さん]はシールで進む
自分は、ほぼフラットな道だし多くの人が歩き踏み固めてられていると読んでツボ足を選択
スピードは変らないが[ヒゲのお兄さん]の方が楽そうでスムーズだ
「シールの方が上下動が少なくて楽なんだよ」
『なるほど!』 ためになる ちょっとした下りで〔スーッ〕と離されてしまった
川は雪解け水が渦を巻くように〔ガウガウ〕と流れ、フチの雪は下がえぐれて、所々大きく崩壊している
流れ込む支流の沢もスノーブリッジになっていた 
ツボ足
 45分
ハトマチ沢出合 1500m 気象;快晴 無風 気温;16℃ 雪;ザラメ  異物多し
11:20
ここから少し斜度が増すが あと少しだ
鳩待峠の手前で振り向けば、朝滑った至仏山ワル沢がかなり高い場所に見える
『やはり跳ね出たMOBYDICK!』
ツボ足
 20分
鳩待峠 1591m 気象;快晴 無風 気温;18℃
11:40下山
DoCoMo
お昼前に鳩待峠に戻ってきてしまった...
予想に反して(今は)疲労感も無い
津奈木橋の道端に【ふきのとう】が自生→
 『残念 もう少し若ければ!』    
かもしか村の湯
戸倉・かもしか村の湯〈\500〉】に浸かる
アルカリ単純泉のかけ流し
無色透明でかすかな硫黄の香り
ぬるめの湯だが木浴槽の露天に浸かりながら
満開の桜を愛でる
戸倉の春は始まったばかり
トミタ
今日は足利/栃木県に泊まりなので赤城山方向に帰る
その前に腹ごしらえの【トミタのとんかつ】だ
沼田にはとんかつ屋さんが多いが、此処は老舗だ
細目のパン粉で薄めのカリカリの衣 厚いがやわらかく、噛むほどに旨さが増すトン肉を赤城と伊香保、そして関越HWの橋を望む座敷で味わう
 赤城丘陵のワインディングを行く 山麓の鍋割山に興味 『登山道はあるのかな?』
 赤城山の南側はGW中のため渋滞中 適当な裏道で抜ける→足利泊

天気図  この山行時の天気図 ;株式会社ウェザーマップ/気象人 のページへリンクさせていただいております
装 備   水タンク:1.5L 1食+行動食1日分 (食は未使用)
  コンロ(中カートリッジ*1)、ツエルトシート
  30Lザック(5.0kg)
  足元 ;山スキーセット+兼用靴
  手元 ;Wストック
反 省 シール or ツボ足 山ノ鼻から鳩待峠への帰り道 今回、自分は板を背負った
ヒゲのお兄さんのようにシールの方がスムーズでよかったみたい

こういう判断は経験がモノいう
写真 急斜面のイメージを写真で伝えるのは難しい
白い雪斜面の斜度や長さを伝えるのって...どうすればいいの?
good 早目のスタート 鳩待峠の駐車場に入れたのも、ワル沢を比較的良い状態の雪質で滑れたのも
早目スタートのおかげだった
感 想  オフピステで夢のような半日をすごせた
好天で至仏山からの素晴らしい展望 & 山頂から足ごたえあるワル沢とムジナ沢の2本を滑走
山スキーは「自分の登った分を滑る」と何処かで聞いたが、今回はリフト無し
登って滑って、登って滑って、最後にまた登り 体力的な心配もあったが、天候が味方してくれた
ワンシーズンかけて 『少しは山スキーらしいコトが出来るようになった』 と思える山行でした
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