07大山 ;山のもの ;海のものとも山のものとも
2007/03/17 up 
伯耆大山(ホウキダイセン)
夏山登山道〜弥山〜剣ヶ峯〜弥山〜行者コース〜大神山神社
2007年 3月 2日(金)
単独・(前泊+)1Day・雪山
行程;6時間35分  移動;4時間45分
白きヤマタノオロチ
時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです あくまで参考としてください

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山陽に行く用事ができた あこがれの秀峰;大山へ
 自宅→【米子/米子HW.】→>ブルーベリー農園横の駐車スペース<
前日の昼から約10時間;850kmの長距離ドライブ
しかし今は、山陰の米子まで全線高速道路で行けるのだから時代は変った
これだけの長距離を走ると、ETC夜間割引の穏健が大きい
大山 高低略図
Onclick! 大山は神々の国;出雲ではなく、東隣りの伯耆ノ国でそびえている
原始の神から神道、そして仏 神は入れ替り 信仰は衰えたかもしれないが
しかしやはり 依然として大山は、神の山であることに疑いの余地は無い
早朝、その大山に紫光の環が付いていた 『叢雲掛かる』
 -ヤマタノオロチの頭上には、常に叢雲(むらくも)が掛かっていたと言う
                                 気象でいう叢雲とはヒツジ雲のこと-
初めて登る大山を前にして、やや興奮気味
荘厳な山姿ばかりに気を捕られ、登山ルートのチェックを見落としそうだ
雪はかなり少ない ヒダスカートのように何本もの縦縞を広げている
10分
駐車場 735m 07:35出立 気象;曇り 無風 気温;2℃ (06:30) Foma ○
車を大山情報館下の広い駐車場に停める
先に無料の駐車スペースも有るが、今回は荷物を積んでいる為、有人管理の場所を選択
『不要』と判断されたスノーシューを外したザックを背負い出立する
大山寺の参道には入らず、川沿いを進み夏山登山道に向かう 橋を渡った場所 -ここも駐車スペース- で登山届けを投函する
10分
夏山登山口 775m 07:45入山 気象;曇り 気温;5℃
橋を渡ると夏山登山道へのショートカットも有るが、自分は大山初登山なので正面口まで舗装路を進んだ
登山道の最初は、仏教が盛んだった時代の名残を感じさせる
暗夜行路に出てくる蓮浄院や、風格のある木材を使った阿弥陀堂が建つ道は、僅かに残った雪が石段を覆う参道だ
夏山登山道口
最初は階段の参道
岡山のご夫婦に会う
登山道の右手に阿弥陀堂
阿弥陀堂
阿弥陀堂の先は、にわかに登山道らしくなり、斜度も少し増す
今登っている夏山登山道には〔*合目〕の標識があり、登る目安がつき易い
一合目が標高870m地点 大山が一升1700mなので、一合90mぐらいの割合のようだ
30分 ツボ足
四合目 1150m 08:15 気象;曇り 気温;6℃
『予報より天気が悪いゼ』 ぼやきながらブナの森を独り黙々と登って行く
ただでさえ気温が高いので、太陽が出てないのは救いかもしれないが…

足下も雪だけとなって 所々で斜度は増す が、ザラメ雪に刻まれたトレースがシッカリあるので
ツボ足で充分標高を稼げる
四合目からは、尾根上を細かくジグザグに登って行く
所々斜度が増す登山道
40分 ツボ足
六合目 1365m 08:55〜08:10 気象;曇り/晴 無風 気温;4℃ Foma ○
六合目で急に木々の背丈が低くなり、いきなり視界が広がった
後方には弓ヶ浜の展望も開けているが、まずは大山北壁の横顔だ
ヤマタノオロチの寝顔か
その迫力ある壁は、やや重い色の雲と合いまい、雪と岩が幾重にも重なるモノトーン色
色の少なさが神聖であり、また恐ろしいモノの寝顔を見ているようでもある
無風の穏やかな天候なので、身体には直接的な影響は何も無いが、
見ているだけで心にプレッシャーがかかり〔ドキドキ〕

例年であれば、まだ雪に埋もれているであろう六合目非難小屋も、
今年は暖冬だった為、ほぼ全体が雪から出ていて使用可能の状態
この先は森林限界を越えるので、 -標高1300mで森林限界というのも山陰ならではだ-
一応アイゼンを装着する 
六合目非難小屋
あそこが頂上カナ?
森林限界を超えて晴れてきました
直線的な尾根道です
今日の一番手の御二人
40分 アイゼン
九合目 1600m 09:30 気象;曇り/晴 無風 気温;5℃
時々だが太陽も顔を出し始めた
斜度の増した直線的尾根道を登りきると九合目
この先は、弥山の頂までナダラカな頂上台地となる
右手には背の低い大山キャラボクが、もう雪帽子を脱ぎ捨てた姿で黒く点在している
雪原には所々で木道が出ているが、アイゼンを装着している為 横の雪上を歩く
手前が弥山 奥が剣ヶ峯
頂上台地
20分 アイゼン
弥山 1709m 09:50〜10:00 気象;晴/曇り 北西微風 気温;5℃ Foma ○
大山頂上にも非難小屋(夏期)が建つ
有人小屋と見まごうほど大きく立派な小屋だ
すぐ裏手が弥山(みせん)で、【大山頂上の碑】がある
天狗は居らず、先行の山スキーのおじさんが休憩されていた
地元の方で、よく滑りに来られるそうだ 大山での山スキーについてお話を聴くことができた

『やはり今年は雪が少ないのですか?』
「ああ 例年ならこの石碑なんか雪の下だよ 昨シーズンは良かった GWまで滑れたからね」
『お勧めのコースはありますか?』
「元谷に滑りこむコース 上部は急斜面だけど面白いよ
   ただ大山は天候が難しい 冬場は急変する事が多いんだ」
おじさんはブーツのバックルを締め、滑りだした
綺麗なフォームで颯爽と大山を滑る
『気持ちよさそう うらやましいゾ!』
谷の入り口まで滑り、また板を担いで小屋の方へ登り始めた
しばらくこの頂上台地のゲレンデで遊ぶのであろう

さて、大山の本来の頂上 -最高標高地点- は、この弥山では無く、
数百m先の痩せた稜線上にある剣ヶ峯である
そこに至る路は、北壁と南壁から、何本も寄せ集めた刃物のような尾根を、
さらに鍛えて作りあげた剣刃の稜線だ
しかも、その剣は研ぎすぎて -近年の群発地震の影響もあり- いつ刃こぼれしてもおかしくない、
グズグズの状態だそうだ
現在、無雪期は危険な為 通行禁止となっている
しかし今は雪が付き、何より今日は風が無い…
とても非難小屋とは思えない立派な小屋
大山頂上非難小屋
ウラヤマシ〜
頂上台地を滑るおじさん
弥山〜剣ヶ峯 剣の稜線
20分 アイゼン+ピッケル
剣ヶ峯 1729m 10:20〜10:30 気象;晴/曇り 北西微風 気温;**℃
弥山〜剣ヶ峰間は夏は通行禁止 冬期は自己責任です
Onclick! 乗ったら落ちます
セッピ
氷とグズグズ石!!
こういった箇所は慎重に
ストックをピッケルに持ち替え、荷物をデポする 稜線にトレースはある
噂通りの刃渡りだが 雪が乗ったことにより、刃の切れ味が落ちている 両足をそろえて立てる -だけの- 幅は確保できる
セッピも数箇所、はっきり判るモノだけだし、雪質も芯はアイスだが表面はザラメ質で安定し、脆い稜線を崩れないよう〔ギュッ〕と
固めてくれている 見た目以上に難儀せず歩ける
しかし、1箇所だけ雪が付いていない小ピークを越えなけらばならない さすがにそこは慎重になる
岩質ではなく、土と小石が積み重なってできているので、ほんとグズグズだ
一歩一歩、稜線を壊さないように静かに・ユックリと加重しながら足を出す
もしも、雪が無い状態で「この稜線を歩け」と言われたら、それは運まかせのロシアンルーレット
Extreme!
北側はまだ雪の谷
雪があるからこそ歩けます
ラクダの背と呼ばれるナイフエッジ
千尋の谷
南側は土と石の谷
弥山から20分 剣ヶ峯に着いた
方位盤が半分雪に埋まっていたのでピッケルで発掘する
【剣ヶ峯】のプレートが出てきた

スサノヲはヤマタノオロチを退治し、切り落とした尾から、天叢雲剣を手にした 『そんな気分』
到頂!
ポインタを載せると発掘
Onclick!
20分 アイゼン+ピッケル
弥山 1709m 10:50〜11:35 気象;曇り/晴 無風 気温;4℃
再び弥山に戻る
荷からカップラーメンを取り出し、湯を沸かす 食べながら、ピストンした稜線を簡単にスケッチする
しばらくすると、岡山から来た単独行の方、倉敷から来られた高齢のグループが登頂されてきた

中国地方は標高の高い山が少ないので、この近辺の方々は都度大山を登るのであろう
みなさんも大山には何度も登られているそうだ 色々お話を聴くコトができました
自分が、てっきり『四国の山かしら?』と思ったのは“ソコヒキノクモ”という現象だそうだし、
西に特徴ある三つコブ姿の山を指差し
「国引き神話で繋ぎとめの杭を立てたのが、この大山とあの三瓶山だよ」と解説してくれるおじさん
「壱岐ノ島や弓ヶ浜が観えるチャンスも、滅多にないのよ」とおばさんが教えてくれた
快晴では無いので彩にはならないが、皆さんがおっしゃるとおり 今日はナカナカの遠望だ
今日はキムチラーメン
韓国が近いので…
瀬戸内海にしては近いと思った
これが“ソコヒキのクモ”
ぼっこん、ぼこぼこ
西に三瓶山 (1126m)
写真では判りづらいですね...
北に壱岐ノ島
Onclick!
美保は美穂だ
大山は標高1700m 日本アルプスなどから比べれば、けして高い山ではない
しかし山陰地方では、抜きん出た高サの独立峰 その秀でた美しい山姿を 日本海にダイレクトに向けている
もし古代に大陸から倭国へのルートマップというものがあれば、大山は必ずランドマークであったろうし、
帰化した人々は ここから望郷を想い観たかもしれない    そんなことを想像しながら山頂を後にする
15分 アイゼン
九合目 1600m 11:50 気象;曇り/晴 気温;6℃
登っている際は、上ばかり観ていたので気がつかなかったが、右手の谷はスキーで滑るのに好いコースに視える
『ここがさっき、山スキーのおじさんが言っていたコースか。』
残念ながら今年は雪が少ないので、もうブッシュが多くなり 下方では砂防の堤が露出してしまってはいるが…

丁度、その山スキーのおじさんが 頂上台地での滑りを終え、登山道の途中で休憩されていた
『よさそうな谷ですね』
「雪が多ければ、堤も埋まり大山寺まで滑れるんだよ」
『パウダーなら最高ですね!』 「そうそう!!」
『今度来る時は山スキーにします』 おじさんと自分に告げた
20分 アイゼン
行者コース分岐 1330m 12:10 気象;晴/曇り 気温;5℃
分岐の標識 六合目から少し下りると、行者コースへの分岐がある
下山はこちらに入りましょう

夏道よりトレースは弱くなるが、谷に向かう尾根のセンターの道なので、
不明瞭な箇所は無かった
こちらもブナの大木に囲まれた静かなコースだ
元谷に出る手前では、雪が深くなり 所々で腿まで潜る
『パウダーが期待できる谷だ』

地図上では登山道は蛇行しているようだが、元谷小屋が もう見えて
いるので〔ズボズボ〕と直線的に下る
素敵なブナ並木の登山道
20分 アイゼン
元谷 1030m 12:30〜13:10 気象;晴 気温;8℃ Foma ○
元谷から見上げる北壁は、襲ってくる大津波のような迫力で 視界のほとんどを占める
雪が付かないほど急峻な壁や、剃刀のような尾根が幾つも立ち上がり、オーバーハングの箇所は鎌のようだ
いたる場所から生じる沢は、合流を繰り返しながら、この元谷で大きな一身;佐陀川となる
大山北壁;白きヤマタノオロチ
大山は火山成りの山である
神話の時代には“火神山”と呼ばれていた
有史に噴火の記録は無いが、地質調査によると 最後の噴火が縄文初期の頃だったそうだ

地質学者;寺田寅彦氏は、ヤマタノオロチの神話は噴火の溶岩流のイメージであろうと唱えた

《ヤマタノオロチは八頭八尾 その目はホオズキのように赤く、またその体には苔と桧や杉が育ち、
体長は八つの谷、八つの峰に渡るほど巨大で、腹はいつも血でただれたている -古事記-》

太古の人々は、この北壁から流れ出る溶岩を、ヤマタノオロチとして伝えたのかもしれない
どんどん空が青くなる 『白きヤマタノオロチ』
上着とアイゼンを脱ぎ捨て、長い砂防堤の上で 今度はCoffeeを飲みながらのスケッチだ
良いコースのようです
おじさんから教わった
山スキールート
/ 25分 ツボ足
大神山神社 奥宮 905m 13:20下山 〜13:35 気象;晴 気温;12℃
左の長廊 大神山神社 正面 下山神社 裏表逆ノ門
堤からは右岸沿いを下って行くと、真直ぐ伸びた杉の大木が増えてくる 神社が近い証だ
すぐに大神山神社・奥宮に出た 日本一の権現造り 左右に大きく広がる長廊 こんな山奥に驚くほど威厳のある神社でびっくりだ
左手には別棟で“下山神社”という宮もある 狛狐が立ち、小振りだが大変手の込んだ屋根が乗っている
下山は(シモヤマ)と読むそうで、(ゲザン)ではない 由緒も登山にはまったく関係ないそうだが、こちらでゲザンのお参りをする

本宮を含め、全体的に仏教色が強いが、おそらく此処は仏の教えが伝わる遙か前の時代から神ノ地だった
大神山神社は、神話の火ノ神カグツチを祀っている
 《カグツチは、母なるイザナミを産れ出る際に火傷を負わせ死なせてしまう 父イザナギは怒り、カグツチを殺してしまう》

古代の神は崇拝だけでは無い 魔なるモノ・恐れるモノも敬う ヤマタノオロチなどは当然後者
この神社の山門は通常と裏表が逆になっているので“後ろ向きの門”と呼ばれている
神のお社を開け放つのではなく、封じ込めるための結界施設なのかも知れない
10分 ツボ足
大山寺 840m 13:45〜13:55 気象;晴 気温;13℃
気持ちいい石畳の参道
素敵な参道でした
自然石に彫ってある
吉持地蔵
大山北壁がチラリ
大山寺 本堂
大神山神社からは登山道ではなく、幾人もの参拝者がすり減らした石畳の参道となる
こういった石畳が持つ 歴史とか信仰心というものには、本当に頭が下がる思いだ
両脇には大きな赤杉が並んでいて、まだまだ山深い場所であることを物語っている
所々に自然石に彫られたお地蔵さまや、云れある湧き水などの史跡があって興味する  大山寺は寺;仏の教えの場所だ
15分 ツボ足
駐車場 735m 14:10 気象;快晴 無風 気温;12℃
大山寺からは、敷き替えられた新しい石畳 宿やお土産屋の並ぶ参道を抜け駐車場に戻った
快晴じゃん!
いまさら、すっかり晴れたのは残念だが
ヤマタノオロチは白蛇となり、善神の化身になられたようだ 青空に包まれ輝く姿は美しい
暗夜行路の主人公;時任謙作は大山登山後、体調が悪くなり倒れてしまうが、自分はいたって元気だ
  -だから悟りが見つからないのか!?-

大山は、今日はきっと素敵な黄昏を迎えるであろう
しかし残念なコトに自分の身は、今夜には山陽に運ばなければならない…

火山成りの大山だが、この近くには温泉が少ない
せっかく晴れ間が広がりだしたので、大山を伯耆町や南側から眺めながら、湯を求めて蒜山(ヒルゼン)高原に車を走らせる
キリン峠;大山環状道路は冬季通行止
Onclick!
伯耆の里から観るとこの姿
伯耆富士、出雲富士と
呼ばれる由縁だ
こちらも険しいゾ
大山南壁 壁から少し遠いためか、蒼き空を行く白龍のイメージ
蒜山高原休暇村;トロン温泉の湯船から見る蒜山三山に雪はまったく無い
スキー場もお手上げだ
この辺りの山は無木立の頂が多い 『雪があれば山スキーも面白そうなエリアだ』
中蒜山(1122m)
休暇村蒜山高原(東館)
引き続き…   楽しきもの;石見銀山 大森の古い町並みと温泉津ノ湯  と巡りました
楽しきもの;出雲・松江 神々とへるんが居た場所

天気図  この山行時の天気図 ;株式会社ウェザーマップ/気象人 のページへリンクさせていただいております
装 備   水:1.5L ハイドロレーションシステム 1食+行動食1日分
  ツエルト、コンロ(中カートリッジ*1)
  30Lザック(6.5kg)
  手元 ;Wストック or ピッケル
  足元 ;雪靴  アイゼン
good 剣ヶ峰 適量で締まった安定した雪 そして稜線での無風
この条件が揃わなければ、自分の技量では弥山〜剣ヶ峰の稜線は歩けなかったであろう
山では快晴ではなかったが、気温が上がらなかった分、春霞も薄かったのかもしれない
弓ヶ浜や壱岐ノ島も観ることができた
感 想 日本では元々山を御神体として崇めるコトが多いが、伯耆大山は その歴史の古さから特別だ
今は時代の流れと共に仏教的要素が多いが、古代;まだ出雲が倭の大国であった頃、その時点ですでに
伝話になっていたであろう活火山大山。 神話に登場する、その姿を垣間観れた山行でした。

《途方もなく素晴らしい夢幻の姿だ。…大空の果てに鋸のような刻みをつくりながら、或は緑に或は青く、
きびしい線の美しさを見せる山並を越えた更に向こうに光に包まれた幻が一つ天に向かってそそり立つ…》
                                                -神々の国の首都 より-
小泉八雲は、出雲からの大山をそう褒めた
八雲は富士山も登り、チェンバレン教授との親交もあったが、大山は登頂しなかった
 -夏山登山道が開かれたのが、大正9年-
もし、八雲が大山頂から出雲の国や壱岐ノ島の展望、そして“あの”北壁を間近で見ていたら、
幻想的描写を得意としていた八雲のことだから、きっと素敵な文章を残してくれただろうに。

空がイマイチだな〜
【 剣刃の稜線 】

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