07仙丈ヶ岳&甲斐駒ヶ岳 残雪期;山のもの ;海のものとも山のものとも
2007/04/19 up 
仙丈ヶ岳 & 甲斐駒ヶ岳
戸台→北沢峠〜仙丈ヶ岳 & 甲斐駒ヶ岳 ;往復
残雪期・単独・テント・2泊3日
2007年 4月10日(火)〜12(木)
時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです あくまで参考としてください
この冬は例年に無い暖冬でした

はクリックで拡大します
戸台〜仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳 平面略図
戸台〜仙丈ヶ岳・甲斐駒ヶ岳 高低略図
 自宅→【甲府昭和/中央HW.】→杖突峠→高遠
今日は戸台からの長いアプローが待っているが、
入山前に白州側からの甲斐駒や高遠の桜を愛でる
楽しきもの;07桜の高遠 へ 楽しきもの;07桜の高遠 へ
詳細は→ 楽しきもの :07桜の高遠
Day1
戸台→北沢峠:駒仙小屋
2007/04/10(tue.)
行程;5時間15分  移動;4時間30分
意外と楽しいアプローチ
戸台駐車場 1005m 10:45入山 気象;快晴 西風 気温;12℃ Foma ×
バス発着基地である仙流荘の先、戸台の河原まで車で入る 今の時期、この先の選択肢は河原沿いを“歩く”だけ
戸台〜北沢峠間のバス:通年、GWから11月上旬に運行 無人の登山指導所に登山届を投函し、テント泊の荷物を背負う
   -駐車場には自分以外に3台の車が停まっていたが、そのうち御二人は釣人 途中の河原で竿を振っていた-
ここでは河原幅も200mぐらいあり、戸台川の右岸につけられた砕石道も 車がすれ違えるほど幅広く整地されている
広角V谷の奥には 甲斐駒の稜線が巨大なダムのようにそびえ、花崗岩の白砂礫に代り 残雪が白く頂を輝かせている
暖冬だった今シーズン、やはり稜線の残雪は少ないようだ  深山へといざなう路 山旅情を感じて好い気分
戸台の駐車場とゲート
河原の駐車場
『さあ、旅立だ』 もうすぐ白岩ノ堤
45分 無雪
白岩ノ堤 1165m 11:30〜11:40 気象;快晴 南西微風 気温;15℃
やがて道は河原より一段高く盛上げられた歩道となるが、所々で崩れ落ちた岩が散らばり、その裂面が白く眩しい
対岸の尾根が“白岩”と言われる急峻な岩質になり、こちら側に近づいてくると古い堤が現れる
そのすぐ先、新しい堤が戸台第二砂防ダム;通称 白岩ノ堤だ  ここは、ちょっとした展望台になっている
『ここで一休』
先は長い まだ河原沿いルートの半分も歩いていない しかし今日は充分時間があるので余裕綽々で一服する
『水の流れはこの石原の下?』
展望台から、いったん流れが消えた広い河原に降り立ち、斜めに横断し左岸に渡る 人の背丈ほどの崩れた石室が目印だ
左岸に渡った後は、まだ無葉の低い樹々の中に付けられた歩道を行く さすがに此処までと比べ足元が凸凹してきた
水量や崖崩れの影響で度々ルートが変わるのであろう 新旧の道が入り混じっている
が、ピンクのマーキングが「これでもか!」と付けられているので安心だ
しばらくすると鋸岳からの沢が合わさり、見上げれば頂も見えてくる でも、近すぎてギザギザ岩稜線の全貌は解かりづらい
方々のwebを拝見すると「この河原(沿い)歩きが一番大変・退屈」と書いてありました
慣れてしまった方には「ツマラナイ河原歩き」でしょうが、自分は初めて&快晴と、まんざらでもない
On click! ケルン代り
目印となる石室跡
今日は陽射しがサンサン
夏は涼々プロムナード?
鋸山の縦走もしてみたいな〜
熊の穴沢
翠ノ珠 右手の原生林の中で、フサフサと苔生す岩が積み重なっている
瑞々しい翠ノ珠 まるで“樹ノ玉子”のようだ 自然からのサプライズに感謝
流されそうな丸太橋で薮沢を渡れば赤河原分岐も近い
On click! 1430m辺り
今回は渡渉せずに済みました
1時間30分 無雪
赤河原分岐 1455m 13:10〜13:25 気象;快晴 無風 気温;15℃
赤河原分岐 崖の上に建つ丹渓山荘は、もう廃業してしまったそうだ
現代では南アルプス林道が開通し、無雪の期間 ほとんどの方がバスで北沢峠に至るため
この小屋も不要となってしまったのであろう
戸台の駐車場から少し入った斜面でも昔の小屋が朽ちていた
深山に捨てられた人口物は醜いが 『もしもの時には助かる...』と言う気持ちも懐く
これって人間のエゴかしら?
丹渓山荘
さて、今日の行程は標高1005mの戸台から、2030mの北沢峠まで登る行程なのだが、ここまでに稼いだ標高は僅か300m。
水平距離で6kmも歩いたのに...だ
朽ち落ちそうな短い丸太橋を渡ると、いよいよい一気に標高を稼ぐ八丁坂  今日の核心部と言われる登りだ
しかし急斜面につけられた路は、大きなジグザグを描くため、実際の勾配はさほどでもない 焦らずゆっくり登る
1500m辺りから足元に雪がチラホラしだす  一時間ほどかけて八丁坂を登りきる
ヘラジカの角みたい 残雪期だが、まだ水量は少ない On click! (*ゝ*) b
倒れた大樹が動物達の橋となり、苔のゆりかごになっていました
息を切らして登り着いた東大平(1735m〜)は、木霊の住処 美しい原生の森でした
入山者が少ないためか、近くで顔を出したカモシカも、物珍しげにコチラを〔ジーッ〕と視たまま動かない
二度目に林道を交差する頃には全面雪の道になった
上ノ東大平から、なんとかアイゼンを着用せず登りきると、山小屋;大平山荘(1960m)の前に出る  『ここまで登ればもう少しだ』
南アルプス林道を横断、森中をショートカットするように進み、再び南アルプス林道に合わされば今日の最高地点;北沢峠も近い
東大平の森
東大平
こんにちわ〜
大平山荘
大平荘
/ 2時間20分 無雪→重雪&氷 ツボ足
北沢長衛荘 2030m 15:45 気象;快晴 西風 気温;6℃ Foma ×
本当の峠から、わずかに進んだ場所に建つ山小屋;北沢長衛荘
小屋の営業が再開されるGWになれば、大勢の方々で賑わうこの場所も、今は誰も居ない
『深山孤独』 大きく立派な建物が、より一層その気持ちを強めさせる
バス停傍のトイレ小屋に熊注意の警告が表示されている
 『食料の保存やゴミの管理を気をつけなきゃ』
北沢駒仙小屋って_今回のベースじゃん!
15分 アイス&トレース ツボ足
駒仙小屋テント場 1985m 16:00着 気象;快晴 西風 気温;4℃ Foma ×
峠から南アルプス林道を下って行けば、今回のベースとなる駒仙小屋のテント場に到着
戸台から5時間以上かかった  『同じ路を戻らねばならぬ帰路は… 今は考えまいて』

この小屋も冬眠中  かつては長衛小屋と言う名称だったが、“駒仙”と変更されたらしい
カンバンも その部分だけ手書きだ
ここは無雪時のテント指定地なのだが、何よりこの時期 水確保の目的でベースに選択しました
無論、通常の水栓は氷結して役立たないが、此処には仙水峠から流れ込む沢が在る
  -実際は翁のレリーフ横に雪融の流れがあったので、沢には降りずにそちらを利用しました-
駒仙小屋
これを見ると、春はまだ先と想う
氷結シンク
橋の上流側は、もう少し安全に降りられそうでした
沢に降りるのは大変そう…
翁ノ水
で、今回利用した雪融の流れ
沢沿いにはテント100張分の広い雪原 そこにザックを背負ったまま、1張り分のスペースを踏む
整地が済んだら 『よっこいしょ』 と肩の荷を下ろし、ノロノロとテントを張る  『コレデ今日ノ厄介ナ仕事ハカタズイタ』
日が山裏に入ると急速に気温が下がってきた
熊避けのためにラジオをつけっ放しにするが、ここは地形の影響か手持ちのラジオの性能のか、電波の通りが悪いようだ
雑音交じりで天気予報を聞きながら、早めの夕食を済せる  食事をすれば温まる 19:00頃に就寝

Day2
北沢峠〜仙丈ヶ岳 ;往復
2007/4/11(wed)
行程;8時間35分  移動;6時間55分
雪のティアラ 仙丈ヶ岳
駒仙小屋テント場 1985m 06:10出立 気象;晴 無風 気温;-5℃ Foma ×
朝 小仙丈が光る
テントからの小仙丈ヶ岳
05:30起床 外気-8℃ 放射冷却と上空の寒気の影響で寒い朝
〔ザッ ザッ ザッ〕 テント内で朝食をとっていると下山する足音が聞こえる
   -今回の山行中 ヒトの気配を感じたのはこの時だけでした-
『戸台に駐車されていた方かな? これで独りかも』
残飯が出ないのは当然として、テントに残して置く食料やゴミはチャック付きの袋に入れて
樹に吊るし上げておく
北米のキャンプ場には、食料を入れる鉄製の容器;ベアーボックスが普及しているそうだ
もちろんグリズリーとツキノワグマでは恐ろしさは異なるが、テントを壊されたり、
食料を食べられたら苦労するもんね
今日は南アルプスの女王と呼ばれる仙丈ヶ岳
最初からアイゼンを履き、軽くなったザックを背負い出立する
10分 重雪&アイス アイゼン+Wストック
北沢長衛荘 2030m 06:20 気象;晴 無風 気温;-3℃ Foma ×
除雪された南アルプス林道を北沢峠に向かって登って行く
峠の登山口から 古く薄い踏み後が残っているので、それをトレースする
一合目の標識が2165m 二合目までは斜度もきつくなく、朝日が差し込む森中をウォーミングアップ気分で登って行ける
正月に除雪したっきり!? 仙丈ヶ岳登山口 朝の森尾根
30分 雪;トレース アイゼン+Wストック
二合目 2195m 06:50〜06:55 気象;晴 無風 気温;2℃
日の出の頃は青空も見得たが、どうやら周囲は雲が立ち快晴とはいかないようだ
2195mの丘を越え、水平気味の道が続く 『なんだ、楽勝か!?』と思った頃、斜面がキツクなる

二合目〜四合目(2430m)の間、夏道はジグザグに付けられている様だが、
そこは雪道 直に登るので、かなりシンドイ
『頂がナダラカに観える山は麓が急勾配』 お約束だ
がんばってグイグイ直登して行く 痩せ気味の尾根を登りきれば大滝ノ頭だ
(*゚○゚)
/ 1時間05分 雪;トレース アイゼン+Wストック
大滝ノ頭 2540m 08:00〜08:15 気象;晴 西微風 気温;2℃
立派なカンバンが立っている大滝ノ頭は五合目  木々の合間、マッスルな北岳が魅せてくれる
休憩後、ストックからピッケルに持ち換え再び歩き出す  すぐに森林限界に出た
ここからは西風を浴びながら、大福のような小仙丈ヶ岳を正面に据える
トレースは消え、吹き溜まりの軟らかい雪は膝まで潜る 反対にアイスの箇所はガチガチだ
アイゼンが丁度よく利く箇所を選びながら登って行く
振り返れば 明日登る予定の甲斐駒ヶ岳が、摩利支天を従え頂を尖らせている
On click!
テント場も見えた
まっちょ君 On click!
1時間10分 雪;吹き溜まり or アイス アイゼン+ピッケル
小仙丈ヶ岳 2885m 09:25〜09:40 気象;晴 西風 気温;4℃
ハーフ&ハーフの空模様
仙丈ヶ岳の真上だけ青空広がり、周囲はぐるっと雲に取り囲まれている
白峰三山には雲がかかり、北岳と間ノ岳までしかカメラに写らない状態なのは残念だが、
小仙丈カールを抱く仙丈ヶ岳まで稜線;小仙丈尾根は、まるで“雪のティアラ”だ 南アルプスの女王に相応しい冠がきらめく
雪のティアラ 女王の招待状
しかし、この美しい稜線も、いざ自分が進む路となると見方が変る
無雪期なら さほど苦労しないであろうが、今はトレース無く、自分のレベルでは “うかつ”に入っていけない領域だ
『ここまでにしようカナ』 そんな気持ちが湧いてくるほど難易度の高い道が頂上へと続いている…

『この美しい女王の誘いを断るのは無礼であろう』 ルートとアイゼンを再確認  意を決し頂上を目指す
小仙丈から、すぐに10mほどの急な岩場の降りが待ち受けていた
セッピの発達した岩ミックスの部分を避け、北側を捲くようにして降りて行く やはりこちら側は固めのアイスだ
『集中〜!』 ステップを切りながら慎重にトラバースする
小仙丈からの降り 氷を割ってエサを捕っていました ティアラのセンター かっこいいぞ
この稜線、小仙丈ヶ岳と仙丈ヶ岳の標高差は150mほどなのだが、数値以上に登る気がする
稜線のセンター寄りには軟らかい雪が溜まっているが、南側は視たとおり大小のセッピがある急峻な崖;小仙丈カール
北側も無木立氷結斜面で、斜度が強くなると表層で滑り落ちそうな薮沢カール
雪の状態を確認しながら、焦らず慎重に足を踏み出す
やがて、ティアラのセンターのように尖った小ピークを越える頃には、この緊張感が楽しくなってきた
『やば 雪山ジャンキーになっちゃたカモ !?』
仙丈ヶ岳 仙丈ヶ岳の頂は三つのカールに準じる地形に囲まれている
南アルプスでのカール地形は珍しい
しかし、今の自分にとっては、
そんな氷河期のロマンではなく、直面するアリ地獄の淵だ

そのアリ地獄の淵が集まる頂上直下広場までやって来た
『あとはこの壁を登るだけだ』
1時間40分 雪;吹き溜まり or アイス アイゼン+ピッケル
仙丈ヶ岳 3033m 11:20〜12:10 気象;晴/曇り 西風 気温;4℃ Foma ×
『女王様 お招きありがとうございます』 踏跡の無い清らかな頂がうれしい
Coffeeを点て雲晴れ待ちをするが、むしろ天候は悪くなるようだ 風も強まってきた
相変わらず農鳥岳は雲隠れ  昨年初夏、縦走した白峰三山を横から眺めたかったが、今日はその望みは叶えられそうにナイ。
まっしろ 大仙丈ヶ岳(2975m) 白峰三山が観たいな〜
北岳(3193m)と間ノ岳(3189m)
薮沢カール側には馬ノ背ルート等もあるが、今の時期は雪崩の不安があるため歩くのは難しい 登りと同じルートで下山する
やはりカールはキレイなボール状で、ザラメ雪になったらスキーも楽しそうに見える
しかし、ここまでスキーを上げる苦労に対して割りが合わないか… それとも小仙丈カールでX-treme !?
   -どちらにしても、アプローチのバスが無い期間は自分には無理ですね-
時々風が強く吹く、北寄りの冷たい風だ 少々頂上に留まりすぎた 『早く小仙丈ヶ岳まで戻ろう』
よし戻ろう 薮沢カール ツベタイ風
50分 雪;吹き溜まり or アイス アイゼン+ピッケル
小仙丈ヶ岳 2855m 13:00〜13:05 気象;曇り/粉雪 北西風 気温;0℃
On click! ついに雪が舞う
結構、軽い粉雪で驚かさせられる
4月とは言え、さすが標高3000mの世界

登りと違い、柔ら目の雪を選んで〔ズボズボ〕と下りて行く
粉雪舞う尾根を下りて行く
25分 雪;吹き溜まり アイゼン+ピッケル
大滝ノ頭 2540m 13:30〜13:40 気象;曇り/粉雪 無風 気温;-1℃
ここまで戻れば一安心
森林限界上部で吹き荒れていた風も、此処では全く無く静かなもんだ
座った正面に、舞う粉雪に消え気味の甲斐駒の姿
明日登る予定なのだが、今は無心で眺める
『静かすぎる…』 まるで、どんどん真空になっていく気がした あわてて深呼吸
大滝ノ頭
/ 40分 雪;トレース アイゼン+Wストック
二合目 2195m 14:20 気象;曇り/粉雪 無風 気温;0℃
二合目からテント場へ直下りのルートもあるようだが、樹林中にヒトの足跡はまったく見当たらずマーキングも怪しそうなので
そのまま登ったルートをたどる
一合目の少し下部で地形が明確になったら森中を真直ぐ降りる  丁度、見晴らし台のカンバンの場所に出た
途中から窪をザクザク直下り みはらし台入り口 ドロノキ
25分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
駒仙小屋テント場 1985m 14:45戻り 気象;曇り/粉雪 無風 気温;2℃
テント場に戻っても、まだ雪が舞っている
山上と違い、湿った雪だ

幸い食料は熊の餌にはなっていない
今夜は少し手をかけたメニュー;メキシカンピラフを作る
外は風が強まり、まだ雪も降っている テントの中で独りDinner
我ながら美味しい

Day3
駒仙小屋〜仙水峠〜駒津峰〜甲斐駒ヶ岳 ;往復
+北沢峠〜戸台
2007/4/12(thu.)
 ・駒仙小屋〜甲斐駒ヶ岳;往復  行程;9時間      移動;7時間30分
 ・駒仙小屋→戸台          行程;3時間40分 移動;3時間20分
雪よ岩よ青空よ
駒仙小屋テント場 1985m 05:40出立 気象;快晴 無風 気温;-6℃ Foma ×
朝起きると雪が2cmぐらい積もっていた 今朝も5:00で-10℃と寒い 雪がフライに氷着している
しかし、今日は一日快晴が期待できる 降りてくる頃にはテントも乾いているだろう
それより、大好きな甲斐駒ヶ岳を目指し 早めに出立だ
テント場から鉄橋を渡り、昨夜の積雪分だけラッセルしながら緩やかに仙水ノ沢左岸を登って行く
テント場からの橋を渡る まだ雪が硬いので歩き易い お助けロープ
一旦右岸に渡り、お助けロープの下がった小崖を登る 再び左岸に戻り、丘を登れば仙水小屋がひっそりと建っている
35分 雪;トレース アイゼン+Wストック
仙水小屋 2140m 06:15〜06:20 気象;快晴 無風 気温;-4℃ Foma ×
仙水小屋
 
ソーラーパネル完備
発電開始!
水も楽に手に入る
仙水小屋は水が確保出来た
この小屋は通年営業(要予約)だそうだが、今朝はヒトの気配は無かった ここで防寒で履いていたレインパンツを脱ぐ
30分 雪;トレース アイゼン+Wストック
仙水峠 2264m 06:50〜07:05 気象;快晴 西風 気温;0℃
峠が近づくと森を抜け出て、谷から吹き上げる西風を感じる ちょっぴり寒い
しかし、こんな日の朝は 山・岩・雪・樹 さまざまなモノが昇りたての陽のエネルギーを受け、覚醒する時間
日中とは異なる光線の変化があり、何を見ても美しく感じる
昨日はあそこに立てた
仙水峠からの小仙丈
峠の朝
峠に昇る太陽
早川尾根への山
残り月と栗沢山
仙水峠の左右はゴーロと呼ばれる岩塊斜面となっている 甲斐駒側は駒津峰までこの粗岩の積み重なりが続いているそうだ
辺りには、その石を用いたケルンが沢山積まれている
雪が無ければゴツゴツした荒涼な場所なのだが、今 半分は白いサフェーサーを吹かれいるので道は滑らかだ
みんな輝きだす朝
ゴーロゴロ
On click!
背丈ほどのケルンもある
On click! そして仙水峠からの甲斐駒ヶ岳;摩利支天
朝日を受ける大岩伽藍が、手を伸ばせば届きそうな場所で輝く
その姿は、あまりにも荘厳で神々しい 思わず両手をさしだし仰ぎたくなる
『もう、このお姿を拝めただけでも、幸せです〜』 
もし、この摩利支天が無ければ甲斐駒の頂は、四方完全なピラミッドと成るのだが
『この大コブが在るからこそ、味があるっていうもんだ』 独り納得する
サンスクリット語でMarici は、太陽や月の光線の意 摩利支天は陽炎(かげろう)の神
陽炎は実体が無く、けして傷付かない幻なので、戦国武将から信仰されたと言う
此処は甲斐の国  山本勘助も守護神としていましたね
『ワクワクする』想いを抱き、甲斐駒の展望台;駒津峰までの登りに入る
最初は森中をグイっと登って行く
所々で急だったり、デブリ屑が現れたりするが、まだ雪が締まっているので登りやすい
最初は針葉樹の森中を行く
一旦融解し、再氷結済
デブリ
清々しい
朝の早川尾根
森を抜けると真直ぐな雪のスロープを登ってゆく
左手側には所々、岩の夏道も覗いてはいるが、
ここもまだ雪が硬いので、雪上直登が楽だ
しかし、右手の甲斐駒側はセッピの箇所もあるので近づかない
昨日登った仙丈ヶ岳が主頂まで拝めるようになってきた
On click!
駒津峰へのスロープ
南アルプス上空は飛行機が多い
まるで流星!
/ 1時間35分 雪;アイス アイゼン+Wストック
駒津峰 2740m 08:40〜08:50 気象;快晴 西風 気温;-2℃ Foma ×
On click! 行けるかな? センターは何処だ?
駒津峰に到着 今日の甲斐駒は凛々しい
前回この場所に此処に立った際は、ガスでそのピラミダルな姿を観られなかったが [→]
今日は完璧ともいえる山姿を観る事ができた 『とても嬉しい。』
山のもの
:05黒戸尾根〜甲斐駒〜鳳凰三山
だがだ、同時に頂直下の六方石までが、予想以上に難易度が高いのも見て取れる
昨日の仙丈ヶ岳の稜線以上に痩せているので、絶対的にセンターを行きたいのだが、かなり傾斜の強いアップダウンがあるし、
そこにはセッピや大岩の難関もミックスされている…

ストックだけデポし、ピッケルに持ち替える トレースの無いエリアに踏み込むと『ドキドキ』だ
駒津峰からの出だし 短いが急な下りだ  〔シャー〕 一歩足を出すと、昨日の降雪分が表層で雪崩た
一皮剥けると超硬のアイス面が顔を出す  『うりゃ!』 思いっきりピッケルを振るって、やっと刃が入る
『ずっと、これだと無理カナ』 少々不安だ
ピッケル・アイゼンの利き具合を確認しながら慎重に進む
先を良く見てルートを思案 最善と思える場所に足を乗せる  『神経戦になってきたゾ』
45分 雪;アイス+岩 アイゼン+ピッケル
六方石 2705m 9:35〜9:45 気象;快晴 無風 気温;4℃
一旦は安全な場所;六方石の広場  巨大な岩に囲まれた迷路の中、風を避けて休憩する
此処からは斜度が増し一気に頂上に向かう直登ルートを行く
『あと250m ここからは岩が多くなるなぁ』
青空の下、自分の何倍もある大岩がゴロゴロする尾根の先で尖る頂を見上げる

夏なら迂回もできる大岩も、アイゼンを装着したまま乗り越えて行かねばならない
しかしザラザラ岩質のせいか意外と滑ラナイ  むしろ大岩周りは 深い落し穴で要注意だ
クラックにアイゼンを突っ込んだり、ピッケルをT字にひっかけたりして岩をよじ登る
中央の亀裂で人の背丈ほどある
六方石の中は岩迷路
直登ルート
どう登ろう!?
一歩ずつ確認しながら
花崗岩
この岩質が白砂礫の元
頂上が近づくと大岩は消え 代りに雪が多くなる  アイゼンが丁度良く利く硬さと 緩んだ斜度に安堵する
55分 岩+雪;アイス アイゼン+ピッケル
甲斐駒ヶ岳 2967m 10:50〜11:20 気象;快晴 西風 気温;6℃ Foma ○
v(*^U^*)v
残雪の南アルプス 『泣きそうデス』
苦労して登った甲斐があるもんだ 甲斐の国から雲が沸き立ち、3000mからの景色に趣をそえる
手前が駒津峰
昨日登った仙丈ヶ岳
2966m→2967m 甲斐駒も背が伸びた
後方は中央アルプス
頂上の祠 甲斐の国を向いている
頂上の祠には草鞋が奉納されていた
昔人は旅の安全や、そこまで厄払いを念じ
峠などに履き潰した草鞋を掛けたそうです
黒戸尾根に至る尾根
黒戸尾根源頭
朝見上げた摩利支天も足下だ
摩利支天
On click!
早川尾根〜鳳凰
今年の八ヶ岳は雪が少ない
八ヶ岳
楽しそうな稜線 -雪が無ければ!-
鋸岳(2635m)
何時までも眺めていたい展望だが、今日はあまり長居をしないほうが良い
『雪が本格的に緩んでしまう前に、ある程度は戻らなければ...』
摩利志天経由は、氷結のトラバースが多そうに視えたので避ける  登りと同じ直登ルートを降る、
所々は雪が無い安全地帯   『びびるな〜』 アイゼン付きで岩場を降るのは、
登り以上に慎重になる けっして焦ってはならない
 ひっかけて、つんのめりでもしたら、まっさかさま
トサカのような岩
 45分 岩+雪;アイス アイゼン+ピッケル
六方石 2705m 12:05〜12:10 気象;快晴 無風 気温;8℃
六方石から駒津峰まで全体的には登って行く
先ほど自分が残したトレースもあるので往路ほどの不安は無いが、それでも緊張は続く
もう少しだ
やはり緩みだした雪がアイゼンに雪ダンゴをつける
硬いアイスに踏み込む際は、都度ピッケルでアイゼンを叩く
30分 雪;重雪orアイス+岩 アイゼン+ピッケル
駒津峰 2740m 12:40〜12:55 気象;快晴 西微風 気温;8℃
『登れたゾ』 甲斐駒は無表情でそびえているが、それを眺める自分の気持ちは登る前とは別モノだ
お昼になると、全面に光線があたる 長っ。。。
白い谷底が戸台への帰り路
山腹を貫いているのが
南アルプス林道
双児山ルートは登り返しもあるし、雪ダンゴにも悩まされそうだ  やはり仙水峠に下りましょう
ここから、遙か下に戸台の谷も見下ろせる 底には白い河原が延々と延びている
 『あそこを歩いて帰るのね…』
現在13:00 『でも、これなら今日中に戸台まで下山できるカモ… 叶えば 高遠の夜桜見物だ』
今日中に下山する気持を半信懐きながら、赤茶色の岩を降りて行く
下りましょう
/ 45分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
仙水峠 2264m 13:40〜13:55 気象;快晴 西風 気温;7℃
日当たりの良い場所では雪が融け、雪床下には水が流れている 森中では時々股まで踏み抜く
天然?
なまこ壁のような模様の岩
On click!
栗沢山側もゴーロだ
もうすぐ仙水峠だ
40分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
仙水小屋 2140m 14:15 気象;快晴 無風 気温;8℃
前行の方… ご苦労様です 気温上昇&標高も下がったので、もう表面の雪がシャーベット状になっている
気持ちは すっかり『今夜は高遠の夜桜見物をするつもり』 なので、僅かな時間短縮よりも
体力温存を考え、踏み抜かないように選んで足を出す
25分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
駒仙小屋テント場 1985m 14:40〜15:20 気象;快晴 無風 気温;8℃
14:40テント場に戻った
『ちょっと遅いが、やはり下山しよう』 ムチ打ってテントを撤収、荷を背負う
『げっ!! 重いじゃん!』 一瞬テントを撤収してしまったコトを後悔する
ブロンズの翁に別れを告げ、駒仙小屋を後にする
15分 雪;重雪&アイス アイゼン+Wストック

北沢長衛荘 2030m 15:35 気象;快晴 無風 気温;9℃
北沢長衛荘 ズシンと重くなったザックでは、北沢峠までの登り坂ですらしんどい
食料が減った分、荷は軽くなっているはずなのだが 『往路より重く感じるのはナゼダ?』
下りなので東大平に入るまでは アイゼンを装着したまま行く

息を切らして登った八丁坂も下りは早い
/ 1時間10分 雪;重雪トレース アイゼン+Wストック →無雪
赤河原分岐 1455m 16:50〜16:55 気象;快晴 無風     気温;12℃
『日没前には白岩ノ堤に着きたいな〜』 アバウトな計算で歩き続ける
『コノ山行の核心部は、この河原歩きだね』 webで皆さんがおっしゃっていた意味が良く解ってきた
しかし、いくらあがいても荷物が軽くなる訳もなく、単調な景色が変わるわけでもない
これがコノ時期、仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳を目指した者の宿命
『ならば受け入れましょう』 こういった時は頭を少し空にするのにかぎる
先のピンクのマーキングを見ながらマイペースで歩き続ける
この風景が延々と
1時間20分 無雪
白岩ノ堤 1165m 18:15〜18:20 気象;快晴 無風 気温;12℃
丁度、日没の頃に白岩ノ堤に着けた
この先は歩道が明確だし、道に散らばる石が白くぼんやりと浮き上がり導いてくれる
もう獣達の時間なので、時々ストックを鳴らしながら歩く それでも歩道にシカが出てくる
人影に驚き、あわてて白いお尻を向けて森中に逃げ込む
深山の谷間は自分の予想より早く闇となる 途中からヘッデンを点す
40分 無雪
戸台駐車場 1005m 19:00下山 気象;晴 無風 気温;10℃ Foma ×
もう真っ暗になってしまった テント場から4時間 ヘッデンの灯りに戸台のゲートが浮かび上がる
『着いたー!!』

結局、今日は朝から歩きっぱなし さすがに足が少々痛い
高遠
『この苦労の見返りは、満開の夜桜見物だ〜』
山荷物を車に突っ込み、高遠の町に車を走らせる
高遠・さくらの湯で、山の汚れを落とし、 高遠城址公園で夜桜を満喫する
楽しきもの;07桜の高遠 へ
詳細は→ 楽しきもの :07桜の高遠
 高遠→杖突峠→【諏訪南/中央HW.】→自宅
満足な山行と素敵な高遠桜に興奮気味の自分が良く判る 仮眠もせず帰路につく

天気図  この山行時の天気図 ;株式会社ウェザーマップ/気象人 のページへリンクさせていただいております
装 備   水:1.5L ハイドロレーションシステム 8食+行動食5日分 (余;2食+行動食2日分)
  テント、寝袋、コンロ(中カートリッジ*)
  ベースまで60Lザック(19.0kg)  アタック時(7.5kg)
  手元 ; Wストック or ピッケル
  足元 ;雪靴 +アイゼン
反 省 下山時間 常識であれば、もう一泊するのが正しき判断であろう
翌日の天気予報も下り気味だったし、何より高遠の夜桜が観たかったので、
少し無理して下山しました
good アイゼン

ピッケル
仙丈ヶ岳は森林限界を越えると、雪質がめまぐるしく変化した
また、甲斐駒ヶ岳では雪と岩のミックスを経験できた
アイゼンやピッケルを完全ではナイが、ある程度使い慣れた
感 想 《己の想うレベルより少し高い次元にチャレンジする  それが果せた時は、高い達成・満足感が得られる》
今回の山行では 仙丈&甲斐駒の両山で、その“やり遂げた感”が得られたので満足です
  - 「下界でもそうしろ」って!? 判ってはいても日常ではナカナカ出来ない自分です -

『孤独を楽しみたかったら雪山に入れ』は、少し乱暴か  今回、わずか三日だが深山で独りだった
山の孤独は寂しい孤独ではない
都会の孤独は、「周囲に大勢のヒトが居るのに独り...」 存在が消えてしまうネガティブな孤独
どうしても思考が自己中心の方向に向けられる
対して山の孤独は -上手に説明できないが- 自分の存在を認識するポジティブな孤独
懸命にフィールドに対応しようとする自分がいたり、忘れがちなヒトの温かさを想う自分がいる

確かに帰りの河原沿い歩きは長かった
しかし、この苦労がなければ仙丈のティアラも、雪と岩の甲斐駒も拝むコトは出来ない。 ならば楽な代償だ

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