山のもの ;海のものとも山のものとも
2006/03/27 up    
乗鞍岳
乗鞍高原温泉スキー場〜位ヶ原〜肩ノ小屋〜剣ヶ峰;往復
2006/03/24(fri.)
単独.・(前車泊+)日帰り・山スキー  行程7時間45分 [行動時間 5時間45分]

快晴無風 春山スキーの楽しさと辛さ
時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです あくまでも参考としてください

 自宅→【中央HW塩尻】→乗鞍高原温泉スキー場 5時間/約310km〈¥5,750〉
第三駐車場に車を入れる 今日は運転中眠たかった すぐに寝袋にもぐり込む
 
07:00起床
快晴 風ナシ 予定通り移動性高気圧に包まれたようだ
関東では桜が開花した 山も厳冬期の寒さは去り、道路や駐車場周囲の木々からは雪が消えている 路肩やゲレンデの雪を見ても冬を想像しない
高天原ヶ原と乗鞍の山が完璧な春山ロケーションにみえる

リフトは8:30から 一回券3枚(\300*3)でゲレンデ最上部に運んでくれる
スープとパンの簡単な朝食を口に入れながら地図を見直す
左;高天原ヶ原 右;乗鞍主頂部
スキー場駐車場 1570m 気象;薄限 無風 気温;-4℃(7:00) 雪;ピステン
08:30出
DoCoMo
しかしリフトが動き出す頃になると曇ってきた 東の木曽側から白い雲がゆっくりやってくる
極端に天候が悪化する心配は無いが、やはり視界は良いほうがいい
リフトが森の中を進むと〔ホーホケキョ・ケキョ・ケキョ〕やっぱり春だ
登山届けは3本目のリフト乗り場のおじさんに手渡した
リフト 20分 
ゲレンデトップ 1990m 気象;薄霧 無風 気温;0℃ 雪;クラスト
08:50〜09:00入山
DoCoMo
トップリフトを降りて南側 針葉樹林のグリーンバンドに幅50mほどの切れ目 乗鞍岳ツアーコースの入り口だ
一段とガスが濃くなる 朝イチのトップリフトを降りて来るのは山に入る方々だけだ
「平日なのに意外と入りますね」 「このガスはすぐに晴れるでしょ」 「最初は一本道 あせらず行きましょう」
自分を含め4人 みなさん単独 まるで入山儀式のように、しかしすばやく準備を終える

グリーンバンド入り口
 ←この方は関西からお越し
 
ゲレンデを離れる 最後の降雪からだいぶ時間がたっているようだ 何本かの登った&滑った跡がある
雪質は表面は凍っているのだが、その下の雪の密度は低い 踏んだ音が太鼓のように響く いわゆるモナカ状

最初の壁は右に捩れながら登って行く
回転引き出しのクトーは装着の手間が無く楽だ しっかり雪を掴んでくれる
が、今日の雪は加重するとクラストした表面の広範囲にヒビが走り塊で滑り出す
ビビリながらキックタンーンしながら登リきる
シール+クトー
 20分 
急勾配 上 2080m 気象;快晴 無風 気温;0℃ 雪;クラスト
09:20
最初の壁の上 左に大きく曲がるあたりでみるみるガスは消えた 再び乗鞍の頂が顔を出す
そして右手の北アルプス穂高岳 ここからでもその雪と岩の稜線の鋭さがよくわかる
『いつかはあそこに立てるのか?』 穂高はちょっと手を伸ばせば届きそうだ ♪ローレライの調べ♪
『惑わされるな まだまだ無理だぞ』

グリーンベルト内の道は乗鞍岳に向かってゆるやかに続いてゆく 後ろを振り返る
さすが皆さん単独で山に入る方々 自分を含め互いに(微妙な)距離を取る姿に思わず微笑んでしまう
すでに『ちょっと暑い』 今日はかなり気温が上昇しそうだ
朝の情報では乗鞍/上高地地区に【なだれ注意報】が出ていた

穂高岳
シール
 1時間30分 
森林限界 2430m 気象;快晴 無風 気温;5℃ 雪;クラスト
10:50
グリーンバンドの森林限界を抜ける手前にまた壁がある
直登している途中で板が滑りだす
もうチョットで壁を越せそうなのでツボ足で登ろうとするが
やはり腿まで沈み雪は重く進めない また板を履く

登りは壁正面ではなく、少し左手の本川沿いでよかった 登って理解

あの壁を越えれば位ヶ原だ
シール
位ヶ原 ****m 気象;快晴 時々西の微風  気温;8℃ 雪;シュカラブ
   乗鞍岳;剣ヶ峰 蚕玉岳 朝日岳  コル(肩ノ小屋)   摩利支天   富士見岳    畳平 


   あぁ なんて伸びやかで美しい風景  夏は月世界のような荒地がこうも姿を変えるものなのか
   あぁ なんて雑音がしないのか  時々吹く弱い風音 雪を砕く自分の足音 必要な音だけが聞こえる
   あぁ なんてさわやかなんでしょう  汗はかいたが、それで身体が冷える事は無い
   あぁ なんて雪山はクリアーなんだ  雪原を渡ってきた風は無の香り
   あぁ なんて,,,おなか減ったぞ  頂上アタックの前に少し食べなきゃ
 街では年齢とともに五感は鈍化し、また無意識・意図的に感覚の入力を抑えるようになってしまった
 ここではそれを開放・解き放つことができる
位ヶ原(クライガハラ) その名なのとおり各頂が背くらべしているようだ

目指す乗鞍剣ヶ峰

北アルプス

中央アルプス
遮るもものの無い雪原 だが実際の足元はシュカラブのデコボコだらけだ
『ここは気持ちよく滑り降りることは出来ない』と思いながら雪原を進む
『おっ!』 朝日岳下の斜面を滑っている人がいる (テント? リフトが動く前に上った?)
きれいなシュプールが刻まれてゆく 気持ちよさそうだ
その方は位ヶ原に滑り降りたあと、今度は摩利支天側を登っていかれた 『すごい猛者だ』
シール
 30分
トイレ小屋 2620m 気象;快晴 時々西の微風 気温;10℃ 雪;シュカラブ
11:20
目印になる夏のトイレ小屋は屋根を残し雪に埋没していた
この辺は雪の下に舗装された道路があるはずだ
数年前までは【日本一標高の高い道路】を売りにした観光地だった乗鞍も今は一般車両は通行禁止
山を削り道を造りそして、通行禁止 自然保護に目覚めたという人間の身勝手
この大量な雪がわずかな雪渓を残し、天地海に帰る
乗鞍だけでいったいどのくらいの水を蓄えているのだろう
ここから肩ノ小屋までは、夏でも大雪渓が残りスキーが楽しめる場所 その分斜度が増す
やや左側から肩の小屋があるコルを目指す シュカラブは減り雪質も良くなる 滑るのが楽しみだ
シ−ル+クトー
25分 
肩ノ小屋 2720m 気象;快晴 時々西の微風 気温;12℃ 雪;アイス
11:45〜12:15
DoCoMo
肩ノ小屋は稜線に建つので埋没は免れている
ここで大休憩 行動食を食べる
温度計は12℃を示す
無風 澄んだ空気を貫いた強い日差しと照り返し
太陽が近い 『暑い〜』 水をガブ飲みする

朝日岳 直登道
ここから朝日岳の直登は急斜面だ 雪が無ければ岩がごろごろしている斜面も
東面半分はシュカラブに侵食され、侵食されていない残り半分もテカった、いかにも滑り落ちてしまいそうな斜面

先にフリートレックのお兄さん]が登っていかれた
『ショートスキーは担ぐのが楽そうでいいな それにしてもきつそうな斜面だ』
自分は板をここにデポして行こう
スキーシールを剥がし小屋脇に置かせてもらう アイゼンを装着する
登ってみると確かにきつい 
シュカブラ海原の美しさを言い訳にして立ち休みする回数が増す アイゼンはしっかり効いている

まさにチューブバレル
いやいや、ほんとうに美しい その凹凸はどれひとつ同じではないが、けして無秩序ではない
基部・気温・風・太陽などに影響される 【成長と融解】という律を持ちそれぞれが絡み合っている
強い光を受けた艶やかなblue-iceに魅了される
海波の形は留まる形を持たない この波は短時間な人間の目から見れば止まってはいるが、見飽きるコトは無い
アイゼン+ピッケル
朝日岳・巻き 2950m 気象;快晴 無風 気温;**℃ 雪;重雪
息を切らしながら振り向く
対山の摩利支天山頂にはコロナ観測所が建つ
丸い観測ドームがあるのだが、コロナだから昼間用なのかしら?
太陽以外の恒星も観察するのかな?
ここで冬の星空を観られたら、さぞかしきれいなことだろう
夏道は肩ノ小屋から朝日岳東側斜面を蚕玉岳(コダマダケ)へのコルに向かってつけられていたと思う
今は朝日岳を夏道より西側斜面を頂上近くまで直登してからコルに降りて行く
長い距離、朝日岳の斜面を横断したくなかったからだ
実際は想像以上にやわらかい雪が溜まっていて問題はなかったのだが
アイゼン+ピッケル
50分
蚕玉岳 2970m 気象;快晴 無風 気温;**℃ 雪;アイス
13:05〜13:10
西の飛騨側には火口跡が滑らかで巨大な陶器製のボールのように口を開けている 真っ白でくすみ一つ無い 雪が解ければカルデラ湖;権現池が現れるはずだ
剣ヶ峰に取り付く所で頂上を満喫した[フリートレックのお兄さん]が降りてこられた
頂上の気持ちよさを告げ、「朝日岳の斜面を滑る」と笑顔で降りていかれた
アイゼン+ピッケル
 20分
乗鞍岳(剣ヶ峰) 3026m 気象;快晴 無風 気温;12℃ 雪;アイス
13:30〜14:00
DoCoMo
無風 ぽかぽかな日差し とても3000mの頂上に居るとは思えない 夏山よりポカポカ感がある
『coffeeを点てましょう』 コンロも荷物も風を気にせずあつかえる

御嶽も頂は剣ヶ峰という名だった 乗鞍も剣ヶ峰 別名を権現岳とも呼ぶ
《権》という文字は仏教用語では《権大納言》などと同じく《臨時の》《仮の》という意味があると言う
御嶽を自由に登ることが許されなかった時代 ここから御嶽を仰いだのかもしれない
もちろん乗鞍岳単山に対する山岳信仰があったのも確かなのだが

その御嶽はまさに御嶽 隣でデンとした姿をちぎれ雲の合間に見せてくれている
今日の展望はすばらしい
幾重にも連なる乗鞍の峰達 それは北アルプスになんとなく繋がっている
西には高山の街をはさみ白山が優雅に横たわる 『あの山の向こうは加賀の国か』
中央アルプス、南アルプス側は今はやや霞んではいるがその姿は大きく、どこまでもどこまでも続く
上機嫌でcoffeeを飲みながら山見にふける

御嶽(3063m)
御嶽の頂上神社に比べれば質素だが
それでも3000m山頂とは思えない
りっぱな社

白山(2702m)

こうやって観ると日本の平野って少ない
『ここで昼寝したら、さぞかし気持ちいいだろうな』と思いつつ荷を背負う
頂を降りはじめるとスキーを担いだお兄さんが登ってこられた
「朝日岳の斜面は荒れちゃった(滑られちゃった)から頂上から滑るよ」
『すご〜い』 お兄さんに頂の席をバトンタッチ

斜面の状態が安定しているのが解かったので、下りは朝日岳をトラバースして肩ノ小屋に向かう
『ここからなら自分も滑れたナ』 [フリートレックのお兄さん]が残したシュプールを見下ろしながらチョット後悔
アイゼン+ピッケル
 25分
肩ノ小屋 2720m 気象;快晴 無風 気温;12℃ 雪;重雪
14:25〜14:35 ゼーゼー言って登った道も下りはあっという間だった
アイゼン&ピッケルを仕舞って、いよいよ滑走だ

安全に滑る以外制限は何もない
スキー
 10分
位ヶ原 ****m 気象;快晴 無風 気温;14℃ 雪;シュカラブ
14:45〜14:50
位ヶ原までは気持ちよく滑れた 雪の状態も文句ない 
[頂から滑降したお兄さん]が先に着いていた
 「頂上から
位ヶ原に続く尾根沿いを滑った すこしアイシーだったけど楽しかったよ」
逆光と日焼けした笑顔に白い歯が強調される
鏡を見たら自分も同じ笑顔であろう 自分は肩ノ小屋からの滑りだったがそれでも充分満足できのだから
頂上から滑ったお兄さん 自分のシュプール
滑走ルート図
[頂から滑降したお兄さん]は 『あとはケガしないようゆっくり降りましょう』と告げ滑り去っていった
スキー
 10分
森林限界 2425m 気象;快晴 無風 気温;**℃ 雪;モナカ
15:00
[から滑ったおさん]が言うように安全に滑るのが、いかに大切で大変な雪質か
位ヶ原のシュカブラ帯の緩斜面はでこぼこを避けながら滑る事ができた
しかしグリーンバンドの中は想像以上に難しい 落とし穴的モナカ雪と重雪に附けられたワダチに板を捕られる
斜度のきつい場面では斜滑降とキックタンーンで抜けようとするがそれでも転んでしまう
もう足筋が巧く板をコントロールできない 転倒すると重雪と荷物の重さでなかなか立ち上がれない 倒れたまま行動が止まる 『コンチクショウ』吐き捨て、こわばってきた腰に力をこめ立ち上がり滑る また転ぶ
『七転び八起き』つぶやいてまた滑りだす
ゲレンデに出る最後の捩れた壁部はすでにかなり荒れている 板をはずしツボ足で降りた
スキー
ツボ足


 50分
ゲレンデトップ 1990m 気象;快晴 無風 気温;12℃ 雪;ピステン アイス
15:50〜16:00 『しんどかった〜』 ゲレンデ最上部でへたる
グリーンバンド帯を滑り抜けるのに1時間近くかかった 予想の倍だ 『あぶないあぶない』
ゲレンデはガリガリアイスとそのデブリになっているが、それでも山中にくらべたらなんでもない
「ラスト1本!」と気合を入れて滑るスキーヤーやボーダーに交じり、独りてれんこ滑りで駐車場に向かう
スキー

 15分
スキー場駐車場 1570m 気象;快晴 無風 気温;12℃
16:15着
太陽は山の裏に回り込んだ 白く輝いていた乗鞍もシルエット姿に変わっている
そうとう疲れたらしい 板を積むのを忘れたまま車を動かす 慌てて積み込む
湯けむり館
湯けむり館〈\700〉】に寄る 秋にもお邪魔したが、ここの温泉施設は大好き
乗鞍岳の中腹から湧き出る湯を引いているという この近所で有名な白骨温泉ともまた少し湯質が違う
硫黄の匂いと少し青緑がかった白濁色の湯 見た目ほど刺激は無くむしろ皮膚をやさしく包み込む感じがする
ひのきの浴槽でまどろむ
 湯からあがれば暖炉のあるラウンジで足を伸ばして休憩できる
5月に出産する友人にさるぼぼをおみやげとする 『えっ乗鞍の東は飛騨じゃない!? 細かい事は気にしない』
 →【中央HW塩尻】→自宅 6時間/約310km〈¥5,750〉 『早くETCを取り付けよう!』
明日は朝から地元で用事がある 温泉効果で疲労感無く自宅に戻れた

天気図  この山行時の天気図 ;株式会社ウェザーマップ/気象人 のページへリンクさせていただいております
装 備     水タンク:1L 1食+行動食1日分 (食は残)
    コンロ(中カートリッジ*1)、ツエルトシート、スコップ
    30Lザック(9kg) 
    足元 ;山スキーセット、兼用靴 orアイゼン
    手元 ;Wストック orピッケル
反 省 モナカ雪 モナカ雪には泣かされた 悪雪を滑るのはまだまだ苦手だ
ゲレンデでは薄い雪層の下にアイスという状態はよくあるが
逆のアイスの下に重雪の状態はオフピステならではであろうし、春山はこの状態があたりまえなのであろう 『克服せねば』
今回はなんとか滑り降りることができたが、現在の自分のスキー能力・体力では場合によっては歩いて下山しなければならない状況も考慮する必要があると思った
荷物 ちょっと過剰装備気味の荷だった 特にもしも時の衣類が多すぎた
確かにこの時期の山は天候の急変等の怖いものがある
この前の連休中にも遭難騒動が相次いだ しかし今日の天気図と行動計画
備えることは大切だが、それでも過剰は良くないのだ
軽量によるスピード・体力維持のほうが大切な場合もあるのだ
感 想 安房トンネル(峠) 道路の関係もあるが自分の観念からすると釜トンネルが北アルプスの南の玄関で
乗鞍は御嶽とセットで北アルプスとは別の山帯のイメージがある
今回の乗鞍、先月登った御嶽 両山とも【地質学的には北アルプスに分類され(諸説あるが)、
3000m級の独立的峰で火山性の生い立ち】 と言葉・科学的には似たような山
しかし、御嶽はやはり信仰の山であったし それに比べ乗鞍は人が遊んだり寛いだりと暮らしに近い山に思えた
この違いは歴史や点在する人工物、麓の雰囲気によるモノが強く影響しているのは明らかだが
それ以外にも山の形状が影響していると思う
御嶽はその巨体を裾から頂部までをグイと段差少なく結んでいて「我ココニ鎮座スル」という容姿だが
乗鞍は頂部の斜度は御嶽のそれよりも鋭いが、それは山全体からすればごく一部でありその他はなだらかで平坦な高原が多い 平地があれば人は生活を考える それが山の望める美しい森であればなおさらであろう

今回出逢った方々は皆さんツワモノだった 板を担ぎ急斜面を登り、滑り、悪雪も難なくこなす
名も知らぬ山のツワモノと同じ日、同じ山に一緒に入れたコトはとてもうれしかった
自分はヘトヘトになってしまったが そのぶん春の山スキーを楽しめた。
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