07仙丈ヶ岳&甲斐駒ヶ岳 残雪期 Day3;山のもの ;海のものとも山のものとも
2007/04/19 up 
仙丈ヶ岳 & 甲斐駒ヶ岳
戸台→北沢峠〜仙丈ヶ岳 & 甲斐駒ヶ岳 ;往復
残雪期・単独・テント・2泊3日
2007年 4月10日(火)〜12(木)
時間・数値・装備及び感想は、この山行時・個人のモノです あくまで参考としてください
この冬は例年に無い暖冬でした

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1日目 戸台→北沢峠;駒仙小屋テント場
2日目 〜北沢峠〜大滝ノ頭〜小仙丈ヶ岳〜仙丈ヶ岳 ;往復

Day3
駒仙小屋〜仙水峠〜駒津峰〜甲斐駒ヶ岳 ;往復
+北沢峠〜戸台
2007/4/12(thu.)
 ・駒仙小屋〜甲斐駒ヶ岳;往復  行程;9時間      移動;7時間30分
 ・駒仙小屋→戸台          行程;3時間40分 移動;3時間20分
雪よ岩よ青空よ
駒仙小屋テント場 1985m 05:40出立 気象;快晴 無風 気温;-6℃ Foma ×
朝起きると雪が2cmぐらい積もっていた 今朝も5:00で-10℃と寒い 雪がフライに氷着している
しかし、今日は一日快晴が期待できる 降りてくる頃にはテントも乾いているだろう
それより、大好きな甲斐駒ヶ岳を目指し 早めに出立だ
テント場から鉄橋を渡り、昨夜の積雪分だけラッセルしながら緩やかに仙水ノ沢左岸を登って行く
テント場からの橋を渡る まだ雪が硬いので歩き易い お助けロープ
一旦右岸に渡り、お助けロープの下がった小崖を登る 再び左岸に戻り、丘を登れば仙水小屋がひっそりと建っている
35分 雪;トレース アイゼン+Wストック
仙水小屋 2140m 06:15〜06:20 気象;快晴 無風 気温;-4℃ Foma ×
仙水小屋
 
ソーラーパネル完備
発電開始!
水も楽に手に入る
仙水小屋は水が確保出来た
この小屋は通年営業(要予約)だそうだが、今朝はヒトの気配は無かった ここで防寒で履いていたレインパンツを脱ぐ
30分 雪;トレース アイゼン+Wストック
仙水峠 2264m 06:50〜07:05 気象;快晴 西風 気温;0℃
峠が近づくと森を抜け出て、谷から吹き上げる西風を感じる ちょっぴり寒い
しかし、こんな日の朝は 山・岩・雪・樹 さまざまなモノが昇りたての陽のエネルギーを受け、覚醒する時間
日中とは異なる光線の変化があり、何を見ても美しく感じる
昨日はあそこに立てた
仙水峠からの小仙丈
峠の朝
峠に昇る太陽
早川尾根への山
残り月と栗沢山
仙水峠の左右はゴーロと呼ばれる岩塊斜面となっている 甲斐駒側は駒津峰までこの粗岩の積み重なりが続いているそうだ
辺りには、その石を用いたケルンが沢山積まれている
雪が無ければゴツゴツした荒涼な場所なのだが、今 半分は白いサフェーサーを吹かれいるので道は滑らかだ
みんな輝きだす朝
ゴーロゴロ
On click!
背丈ほどのケルンもある
On click! そして仙水峠からの甲斐駒ヶ岳;摩利支天
朝日を受ける大岩伽藍が、手を伸ばせば届きそうな場所で輝く
その姿は、あまりにも荘厳で神々しい 思わず両手をさしだし仰ぎたくなる
『もう、このお姿を拝めただけでも、幸せです〜』 
もし、この摩利支天が無ければ甲斐駒の頂は、四方完全なピラミッドと成るのだが
『この大コブが在るからこそ、味があるっていうもんだ』 独り納得する
サンスクリット語でMarici は、太陽や月の光線の意 摩利支天は陽炎(かげろう)の神
陽炎は実体が無く、けして傷付かない幻なので、戦国武将から信仰されたと言う
此処は甲斐の国  山本勘助も守護神としていましたね
『ワクワクする』想いを抱き、甲斐駒の展望台;駒津峰までの登りに入る
最初は森中をグイっと登って行く
所々で急だったり、デブリ屑が現れたりするが、まだ雪が締まっているので登りやすい
最初は針葉樹の森中を行く
一旦融解し、再氷結済
デブリ
清々しい
朝の早川尾根
森を抜けると真直ぐな雪のスロープを登ってゆく
左手側には所々、岩の夏道も覗いてはいるが、
ここもまだ雪が硬いので、雪上直登が楽だ
しかし、右手の甲斐駒側はセッピの箇所もあるので近づかない
昨日登った仙丈ヶ岳が主頂まで拝めるようになってきた
On click!
駒津峰へのスロープ
南アルプス上空は飛行機が多い
まるで流星!
/ 1時間35分 雪;アイス アイゼン+Wストック
駒津峰 2740m 08:40〜08:50 気象;快晴 西風 気温;-2℃ Foma ×
On click! 行けるかな? センターは何処だ?
駒津峰に到着 今日の甲斐駒は凛々しい
前回この場所に此処に立った際は、ガスでそのピラミダルな姿を観られなかったが [→]
今日は完璧ともいえる山姿を観る事ができた 『とても嬉しい。』
山のもの
:05黒戸尾根〜甲斐駒〜鳳凰三山
だがだ、同時に頂直下の六方石までが、予想以上に難易度が高いのも見て取れる
昨日の仙丈ヶ岳の稜線以上に痩せているので、絶対的にセンターを行きたいのだが、かなり傾斜の強いアップダウンがあるし、
そこにはセッピや大岩の難関もミックスされている…

ストックだけデポし、ピッケルに持ち替える トレースの無いエリアに踏み込むと『ドキドキ』だ
駒津峰からの出だし 短いが急な下りだ  〔シャー〕 一歩足を出すと、昨日の降雪分が表層で雪崩た
一皮剥けると超硬のアイス面が顔を出す  『うりゃ!』 思いっきりピッケルを振るって、やっと刃が入る
『ずっと、これだと無理カナ』 少々不安だ
ピッケル・アイゼンの利き具合を確認しながら慎重に進む
先を良く見てルートを思案 最善と思える場所に足を乗せる  『神経戦になってきたゾ』
45分 雪;アイス+岩 アイゼン+ピッケル
六方石 2705m 9:35〜9:45 気象;快晴 無風 気温;4℃
一旦は安全な場所;六方石の広場  巨大な岩に囲まれた迷路の中、風を避けて休憩する
此処からは斜度が増し一気に頂上に向かう直登ルートを行く
『あと250m ここからは岩が多くなるなぁ』
青空の下、自分の何倍もある大岩がゴロゴロする尾根の先で尖る頂を見上げる

夏なら迂回もできる大岩も、アイゼンを装着したまま乗り越えて行かねばならない
しかしザラザラ岩質のせいか意外と滑ラナイ  むしろ大岩周りは 深い落し穴で要注意だ
クラックにアイゼンを突っ込んだり、ピッケルをT字にひっかけたりして岩をよじ登る
中央の亀裂で人の背丈ほどある
六方石の中は岩迷路
直登ルート
どう登ろう!?
一歩ずつ確認しながら
花崗岩
この岩質が白砂礫の元
頂上が近づくと大岩は消え 代りに雪が多くなる  アイゼンが丁度良く利く硬さと 緩んだ斜度に安堵する
55分 岩+雪;アイス アイゼン+ピッケル
甲斐駒ヶ岳 2967m 10:50〜11:20 気象;快晴 西風 気温;6℃ Foma ○
v(*^U^*)v
残雪の南アルプス 『泣きそうデス』
苦労して登った甲斐があるもんだ 甲斐の国から雲が沸き立ち、3000mからの景色に趣をそえる
手前が駒津峰
昨日登った仙丈ヶ岳
2966m→2967m 甲斐駒も背が伸びた
後方は中央アルプス
頂上の祠 甲斐の国を向いている
頂上の祠には草鞋が奉納されていた
昔人は旅の安全や、そこまで厄払いを念じ
峠などに履き潰した草鞋を掛けたそうです
黒戸尾根に至る尾根
黒戸尾根源頭
朝見上げた摩利支天も足下だ
摩利支天
On click!
早川尾根〜鳳凰
今年の八ヶ岳は雪が少ない
八ヶ岳
楽しそうな稜線 -雪が無ければ!-
鋸岳(2635m)
何時までも眺めていたい展望だが、今日はあまり長居をしないほうが良い
『雪が本格的に緩んでしまう前に、ある程度は戻らなければ...』
摩利志天経由は、氷結のトラバースが多そうに視えたので避ける  登りと同じ直登ルートを降る、
所々は雪が無い安全地帯   『びびるな〜』 アイゼン付きで岩場を降るのは、
登り以上に慎重になる けっして焦ってはならない
 ひっかけて、つんのめりでもしたら、まっさかさま
トサカのような岩
 45分 岩+雪;アイス アイゼン+ピッケル
六方石 2705m 12:05〜12:10 気象;快晴 無風 気温;8℃
六方石から駒津峰まで全体的には登って行く
先ほど自分が残したトレースもあるので往路ほどの不安は無いが、それでも緊張は続く
もう少しだ
やはり緩みだした雪がアイゼンに雪ダンゴをつける
硬いアイスに踏み込む際は、都度ピッケルでアイゼンを叩く
30分 雪;重雪orアイス+岩 アイゼン+ピッケル
駒津峰 2740m 12:40〜12:55 気象;快晴 西微風 気温;8℃
『登れたゾ』 甲斐駒は無表情でそびえているが、それを眺める自分の気持ちは登る前とは別モノだ
お昼になると、全面に光線があたる 長っ。。。
白い谷底が戸台への帰り路
山腹を貫いているのが
南アルプス林道
双児山ルートは登り返しもあるし、雪ダンゴにも悩まされそうだ  やはり仙水峠に下りましょう
ここから、遙か下に戸台の谷も見下ろせる 底には白い河原が延々と延びている
 『あそこを歩いて帰るのね…』
現在13:00 『でも、これなら今日中に戸台まで下山できるカモ… 叶えば 高遠の夜桜見物だ』
今日中に下山する気持を半信懐きながら、赤茶色の岩を降りて行く
下りましょう
/ 45分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
仙水峠 2264m 13:40〜13:55 気象;快晴 西風 気温;7℃
日当たりの良い場所では雪が融け、雪床下には水が流れている 森中では時々股まで踏み抜く
天然?
なまこ壁のような模様の岩
On click!
栗沢山側もゴーロだ
もうすぐ仙水峠だ
40分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
仙水小屋 2140m 14:15 気象;快晴 無風 気温;8℃
前行の方… ご苦労様です 気温上昇&標高も下がったので、もう表面の雪がシャーベット状になっている
気持ちは すっかり『今夜は高遠の夜桜見物をするつもり』 なので、僅かな時間短縮よりも
体力温存を考え、踏み抜かないように選んで足を出す
25分 雪;重雪 アイゼン+Wストック
駒仙小屋テント場 1985m 14:40〜15:20 気象;快晴 無風 気温;8℃
14:40テント場に戻った
『ちょっと遅いが、やはり下山しよう』 ムチ打ってテントを撤収、荷を背負う
『げっ!! 重いじゃん!』 一瞬テントを撤収してしまったコトを後悔する
ブロンズの翁に別れを告げ、駒仙小屋を後にする
15分 雪;重雪&アイス アイゼン+Wストック

北沢長衛荘 2030m 15:35 気象;快晴 無風 気温;9℃
北沢長衛荘 ズシンと重くなったザックでは、北沢峠までの登り坂ですらしんどい
食料が減った分、荷は軽くなっているはずなのだが 『往路より重く感じるのはナゼダ?』
下りなので東大平に入るまでは アイゼンを装着したまま行く

息を切らして登った八丁坂も下りは早い
/ 1時間10分 雪;重雪トレース アイゼン+Wストック →無雪
赤河原分岐 1455m 16:50〜16:55 気象;快晴 無風     気温;12℃
『日没前には白岩ノ堤に着きたいな〜』 アバウトな計算で歩き続ける
『コノ山行の核心部は、この河原歩きだね』 webで皆さんがおっしゃっていた意味が良く解ってきた
しかし、いくらあがいても荷物が軽くなる訳もなく、単調な景色が変わるわけでもない
これがコノ時期、仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳を目指した者の宿命
『ならば受け入れましょう』 こういった時は頭を少し空にするのにかぎる
先のピンクのマーキングを見ながらマイペースで歩き続ける
この風景が延々と
1時間20分 無雪
白岩ノ堤 1165m 18:15〜18:20 気象;快晴 無風 気温;12℃
丁度、日没の頃に白岩ノ堤に着けた
この先は歩道が明確だし、道に散らばる石が白くぼんやりと浮き上がり導いてくれる
もう獣達の時間なので、時々ストックを鳴らしながら歩く それでも歩道にシカが出てくる
人影に驚き、あわてて白いお尻を向けて森中に逃げ込む
深山の谷間は自分の予想より早く闇となる 途中からヘッデンを点す
40分 無雪
戸台駐車場 1005m 19:00下山 気象;晴 無風 気温;10℃ Foma ×
もう真っ暗になってしまった テント場から4時間 ヘッデンの灯りに戸台のゲートが浮かび上がる
『着いたー!!』

結局、今日は早朝から歩きっぱなし さすがに足が少々痛い
高遠
『この苦労の見返りは、満開の夜桜見物だ〜』
山荷物を車に突っ込み、高遠の町に車を走らせる
高遠・さくらの湯で、山の汚れを落とし、 高遠城址公園で夜桜を満喫する
楽しきもの;07桜の高遠 へ
詳細は→ 楽しきもの :07桜の高遠
 高遠→杖突峠→【諏訪南/中央HW.】→自宅
満足な山行と素敵な高遠桜に興奮気味の自分が良く判る 仮眠もせず帰路につく

天気図  この山行時の天気図 ;株式会社ウェザーマップ/気象人 のページへリンクさせていただいております
装 備   水:1.5L ハイドロレーションシステム 8食+行動食5日分 (余;2食+行動食2日分)
  テント、寝袋、コンロ(中カートリッジ*)
  ベースまで60Lザック(19.0kg)  アタック時(7.5kg)
  手元 ; Wストック or ピッケル
  足元 ;雪靴 +アイゼン
反 省 下山時間 常識であれば、もう一泊するのが正しき判断であろう
翌日の天気予報も下り気味だったし、何より高遠の夜桜が観たかったので、
少し無理して下山しました
good アイゼン

ピッケル
仙丈ヶ岳は森林限界を越えると、雪質がめまぐるしく変化した
また、甲斐駒ヶ岳では雪と岩のミックスを経験できた
アイゼンやピッケルを完全ではナイが、ある程度使い慣れた
感 想 《己の想うレベルより少し高い次元にチャレンジする  それが果せた時は、高い達成・満足感が得られる》
今回の山行では 仙丈&甲斐駒の両山で、その“やり遂げた感”が得られたので満足です
  - 「下界でもそうしろ」って!? 判ってはいても日常ではナカナカ出来ない自分です -

『孤独を楽しみたかったら雪山に入れ』は、少し乱暴か  今回、わずか三日だが深山で独りだった
山の孤独は寂しい孤独ではない
都会の孤独は、「周囲に大勢のヒトが居るのに独り...」 存在が消えてしまうネガティブな孤独
どうしても思考が自己中心の方向に向けられる
対して山の孤独は -上手に説明できないが- 自分の存在を認識するポジティブな孤独
懸命にフィールドに対応しようとする自分がいたり、忘れがちなヒトの温かさを想う自分がいる

確かに帰りの河原沿い歩きは長かった
しかし、この苦労がなければ仙丈のティアラも、雪と岩の甲斐駒も拝むコトは出来ない。 ならば楽な代償だ

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